さざんか梅雨

 

 

 長く続いた雨が去り、久々の太陽が街の木々を照らす。鳥たちは高く飛び、ビルの間から富士山は悠然とその姿を現す。いちょう並木は「ここぞっ!」とばかりに、もうすぐそこまで来ている冬に備えての紅葉を急ぐ。

 

 各家々を回り、介護施設へと向かう車の中では、とりわけ面白い話をしているわけではないのに、女性たちの笑い声が止まらない。太陽は、こうも人たちを陽気にさせるのかと、感謝の気持ちでいっぱいになる。よく晴れた日の女性は、歳に関係なく陽気だ。今朝の街のセントラルパークはいつもより多くの人たちが来ている。ジョギング(やウォーキング)をしている人たちを、表情順にまとめてみると、笑顔の多い順に、

 

  • 小学生の女子グループ
  • 老人の女性グループ
  • 幼い子と親
  • 小学生の女子、ひとり
  • 小学生の男子グループ
  • 中学生の女子
  • 犬、鳩、など(表情わからないので:楽しそうにも、辛そうにも見える)
  • 中学生男子と成人男女
  • 老人男性
  • 中高年男子

 

小学生や老人たちの女性グループは楽しそうに、とにかく話に夢中で、走ったり、歩いたり、は二の次。天気のはなし、テレビのはなし、食べ物のはなし、学校のはなし、友達のはなし、男のはなし、女のはなし、、、全般的に男性は話しながらの人は少なく、ほぼ無表情。黙々と、淡々と。しかし、40代前後の中高年男性となると、これはもう「拷問」にでもかけられているような形相で、何か恐ろしいものに追われてでもいるかのように走っている。中には絞り出すようにうなり声を出しながら走っている本格派も。秋から冬にかけての、この時季の長雨のことを「さざんか梅雨」と呼ぶ、と、年配のご老人から教えてもらった。梅雨明けの太陽がもたらした人々の表情に、おんなとおとこを見て、大きな脳をもち、二足歩行を始めてからの600万年の歳月に感動するのでした。