はたらくおじさん。

 

 

 ブラジルで、カーニバルの時期になると、日本ではそろそろ「春一番」とか「桜の開花宣言予告」なんて言葉が聞こえだします。軽井沢では、いまだ厳冬期の真っただ中ですが、それでも、冬は終盤戦にさしかかってきた感がでてきます。じきに根雪が解けだし、木々が目を出し、山肌にこぶしの白い花が咲く。そして、都会からひと月遅れの桜が咲きだす。商い的にも、待ちに待った連休がやってきます。

 

 軽井沢で新しく別荘を購入した人の、庭の造園関係の要望で、特に多いのが紅葉と桜です。やがて孫が大きくなったら、この木の下で花見でも、と。寒いところですから、こればかりは東京の業者に頼んで、というわけにはいきません。小学校の入学、卒業写真では、やっぱり、あれば桜の木の下で。おそらく、何十年も前に、そこを見越して、この場所に植えられたのであろう、桜。

 

 花見をしない暮らしが長かったせいか、桜の時期になると、いつも「こんなに色うすかった?」と思うのです。桜といえばピンクと刷り込まれていますので、どちらかというと白い桜に、どこか違和感があります。一方で、梅は華やかです。さくらのひと足前に、まずは梅から春が始まる。やがて、実をつけ、梅干しに。梅派です。

 

 数年前、帰国した春に、高稲荷公園の桜を見に行きました。満開のソメイヨシノの中。母を連れてこれなかったのは残念ですが、やっぱり「桜」、日本人には特別な花です。

 

 帰国した時、ネット環境がなかったので、いつも駅前のマクドナルドへ行っていました。マックといえば高校生アルバイトの花形、でしたが、このところ「ポテトもおひとついかがですか~」の、スタッフの皆さんにも、だいぶ時代がのってきました。見渡すと、周りの席にいるみなさんも…。これは、マックに限ったことではありませんが。

 

 ヤクルトはすでにおばさんではなく、どこからみてもおねえさん。あるスーパーのチェーン店では「60歳以上に引き下げしました!」と、65歳以上からだった高齢者用のお得な買い物カードを、来月からスタート!と、勧める店内放送でにぎやかです。それを聞くたびに(オレもししゃごにゅうすれば…)と、何とも言えない、追いつめられた感に襲われます。

 

 年齢や時間に気を掛けない暮らしを、日々送ろうと思っています。が、なかなか、まわりは騒がしく営業してくれます。

 

 年をとったら、隠居してのんびりと暮らす。という生き方は危険で、隠居の仕方にもよりますが、それまで毎日働いていた人が、家でゴロゴロしだすと、すべてに「終わりに向かったスイッチ」が入ってしまいます。予防する方法はただ一つ、働くことを、動くことをやめない。つまり、最後まで動いている。こう考えています。

 

 金銭的にはもちろんですが、何よりも大切なのは「動ける体を維持していく」ことです。何も、ベンチプレスや公園一週のタイムで数字を作るということではなく、普通に過ごしていける体づくりです。電車の中で立っていても、帰宅後に家事をしても、休日の子供に付き合いされても、へたれないコンディション。

 

 最もやっていけないのは、テレビを見ながら、たまの病院通い。少しでもその兆候があれば、これは早急に改善しなければならない問題です。ぼくは、テレビ持っていませんが…。日中、よく動いた体は、心地よい睡眠を約束してくれます。

 

 仕事は何であれ、外に出るということは、社会との接点を持ち、それなりの新しい出会いがあり、今までのプライドを捨てて、もう一度生まれ変わる。なにより、天気のいい日には、太陽にあたることができます。そうしているうちに、しかるべき時が来たら、天が休みをくれる。

 

 気がつけば、周りはほとんど年下。同世代や、今や多数派の年上の皆さんと会い(まだまだオレは若い)を、実感するもよし。ドロップハンドルの若者のように飛ばすことはできなくても、ゆっくりと走り、それでも「さらり」とかわせる身でありたい。

 

 ベランダに出ると、散歩やジョギング、すでに出勤している人たちがちらほらと。一昔前には、この時間歩いているのは、酔っぱらった若者だけだった気がしますが、中には、ぼくよりも年上の人も。

 

  東の空が白んできました。

 

「いってらっしゃい!」