いきものたちと、わたくし。

 

 初めての人と会うとき、相手がわからないので、知りえていることで想像します。実際に会ってみると、まるで違っていたこと、よくあります。同じように、初めての場所、初めての仕事、知らないもの…。

 

 場所や物はともかく、人は厄介です。できるだけ心穏やかに対応し、場合によっては距離を置きます(右クリック・削除)。パソコンの作業と同じようにサラッと。逆に、思っていた以上に、会ってみてよかった人も。

 

 PCと違い、人は現物がまだそこに残っているので、良くも悪くも、すぐには問題解決になりません。いい人、また、会いたいと思う人ならば、これは問題なし。しかし、どうしてもNGな人、そして、これからも会わなければならない。そんなときは、虫。

 

「無視」ではなく、「虫」。

 

 どういうことかというと、人のことを、虫だと思って接する。あまり大げさに嫌わない程度に、虫としてとらえる。ぶんぶんとうるさいな、と思っているものの、虫ならば、わざわざ声に出して反論することもしないし、眉間にしわを寄せることもない。

 

 てんとう虫は見た目もいいし、害虫を捕食してくれるので、だいぶフレンドリー。蝶はきれいですが、よく見ると、ややグロテスク。ハエや蚊、ゴキブリなどは、居合わせたとき、もし、ハエたたきでも近くにあろうものなら…!

 

 カブトムシクラスになると、これはもうヒーローで、むしろ近くにいればうれしくなっちゃう。トンボは、飛んでいる姿は素晴らしいものの、なかなか近くには来ない。ブラジルの郊外で、仏壇のように黒く輝く「ダイコクコガネ」に会ったことがあります。あの日の感動は今も忘れません。

 

 人と虫をかぶせることを、何十年もしていると、相手のクオリティーによって、虫の種類もだいぶ使い分けができるようになってきます。だんだんとキャラクターが出来上がっていき、ほとんど間違いはありません。虫の中でも、近くにいてもそれほど嫌でないもの、むしろ好きなものいます。

 

 そうしていくうちに、虫と人が逆になってしまい、なんとなく「この人、苦手だなぁ」と、感じる人を見るとき、すでにもう、話す前から虫になっている。特にはじめて会うときは。ぼくの場合、この虫ジャッジは100%正解、まず、間違いはありません。そもそも、基本的に、初めての人は虫ならば?と見てしまうので、当然ですが。

 

 やがて、二言三言、話していくうちに、人間の中身も見えてきて、そんな人はすぐに人になるわけです。しかし、脳はイイカゲンで、カブトムシやクワガタ、大ナナフシのように、好きな昆虫も多く、いい人なのに虫カテゴリーのケースも。こうなれば、鳥や動物、魚の出番です。ゾウやキリン、チンパンジーにゴリラ、タコやフグ、イルカにシャチ、スズメにオオハシ、カラスにダチョウ…。

 

 そうなってくると、日々の暮らしの中は、まわりは生き物でいっぱいです。もう、そこに人間の姿はありません。擬人化、ではなく「擬いきもの化」ですね。とにかく強くて優しい奴は、ゴリラ。チョロチョロと動いて小食の人は、ネズミ。やたらめったら人にかみつくやつは、ワニ。凛として、何ともエレガントな女性は、フラミンゴ。そして、彼女の周りに張り付いている女性は、ちょうちょ。

 

 ぼくは、食べるのが早い。というよりも、ほとんどの食事は僕にとって「飲みもの」です。しかし、いつも食べているわけではなく、毎日、20時間くらいは常に飢えています。腹が減っているのです。なにせ、一日一食なものですから。

 

 サバンナのライオンたちも、いつも食事をしているわけではなく、獲物が取れなければ、何日間も食べずに行動しています。なので、ぼくと似たところはあります。

 

 ライオンの食事シーンというのは、むしゃむしゃとおいしそうに食べています。ぼくは、ほぼほぼ、飲み込んでいるので、やはり魚か鳥、ということのなるわけですが、あまり見た目が良くないので、ここはカラスとしておきます。

 

      人を笑うんじゃない

    その3倍、お前は笑われている

 

 

 毎朝、玄関を出て、一服するときに、かなりの確率で、カラスに会います。残飯をあさる「ゴミ捨て場の生き物」のように思われていますが、実際に彼らの行動を見ていると、とても、お洒落です。いつも、木のうろで水を飲み、そのあと、必ず、自分のメンテ。くちばしを磨いたり、毛づくろいをしたりと、かなりの時間を、体の手入れに使っています。

 

 おそらくは、ここぞ、というパーティーの時、彼らはちゃんと着る服を持っているということなのでしょう。世の中から見られているほど、避けるべき生き物ではないのは事実です。雨、雪、風、曇り、晴れ、天気に関係なく、彼らは、いつもお洒落です。何か、周りの条件に関係なく、自分の生き方を持った生き物だけに見られる命の力が、その、小さな体から、あふれ出ています。

 

 野生は、迷わない。

 

 くだらないことに時間を、命を使わない。

 

 明日の天気がどうであろうと、やるべきことは、決まっている。