薬。

 

 血圧計を買ったので、ここぞとばかりに毎日計っています。そのうち、自分のいつもの数値がわかってきて、たまにしか計らなくなった今も「今日はちょっと高いかな?」と、感じたときに思い出したように計ると、大体当たっています。

 

 風邪気味の時や、熱がある時、医者へ行き薬をもらって帰ってきて飲むと、それなりに症状は治まります。それこそ、血圧が高めの人や、夜、寝付けない人などは、普段から常用している薬もあるでしょう。

 

 ぼくの食生活は、1日1食、量は気にせず、好きなものを好きなだけ。食材には、ほどほど、こだわります。この部分を厳しく設定しすぎると、やや、面倒くさくなってくるので、ざっと、天然もの、無添加、あたりで区分しています。

 

 野菜については、日本の農薬残留量、使用量があまりにも多すぎて、できれば外したいところですが、無農薬野菜は売り場でも量が少なく、値段も高いので、ここも、厳しくはしません。

 

 昔、ニンジンや、ピーマンはまずかった。それは、ぼくが子供だったからではなく、野菜そのものの味が、まずかった。もっと濃かった。と、感じているのは、ぼくだけではないと思います。今はどんな野菜も、一般的なものは、やさしく、薄味で、ほんのりと甘い。海外で同じ種類の野菜を食べると、やっぱり、昔のような濃い味がします。

 

 ブラジルで暮らしていて、行ったこともない街で懐かしい想いを感じるのは、その理由のひとつに、この昭和のような香りがあるからだと思います。大人になった今、子供がまずいというくらいの、濃い味の野菜の方が断然おいしいのです。

 

 日本は、食材を選び、なるべく新鮮なままに食するのがいいところで、魚のおろし方や、野菜の下処理、出汁のとり方など、出来上がった料理のクオリティーと見栄えが大事。お酒とごはんで。フランスでは、生クリームやバターをふんだんに使いじっくりと煮込み、仕上げに追いバター。パンとワインで。イタリアではフライパンに油をひいて、ニンニクと唐辛子で香りをつけて、ササっと炒めて出来上がり。パスタとワインで。おおむねラテン国家ではこんな感じで、コトコト煮るのは豆くらいです。

 

 一日一食は、絶食から始まりました。ひょんなことから、一日、何も食べられなかった日があり、ある程度の時間が過ぎた後は、あまり空腹を感じませんでした。そして、翌日の調子が今までになく良かったからです。以後、たまに食事を抜く日を作りました。しかし、それは、ぼくのように意思のよわい人間には向かず、ついつい、ペースを乱してしまうという逆効果の日があり、これを規則正しくするために、一日一食を始めました。

 

 これだと、毎日、大体同じようなことの繰り返しなので、リズムがとりやすいのと、自由時間が増えるというメリットがあり、ハマりました。力、つまり筋力はだいぶ落ちましたが、持久力は格段に上がりました。家でも、基本ゴロゴロしていたのが、今はよく動きます。

 

 普通に暮らしていても、そこそこ体を動かして行う作業はあって、それを妥協しないできちっとやっていると、それなりにおなかが減ってくるのです。大体、1日20時間くらいは飢えています。腹が減って怒りやすくなったか?というと、その逆で、落ち着いた気持ちの時間が増えました。

 

 風邪をひきそうなとき、今までは栄養のあるものを食べて体力をつけようとしていましたが、実は、調子を落としそうなときは、何も食べないでじっとしている方が回復が早いのです。野生生物がそうであるように、繁みに隠れて力が出てくるのをじっと待つ。

 

 ものを食べてしまっては、残っている体の力は、それを消化する方に使われてしまい、肝心の回復に向けるための力が少なくなってしまうからだと思います。安保徹先生は、「発熱、下痢、悪寒、肌荒れ…、こういったものは、実はすべて体の治癒反応で、薬によってそれらを抑えてしまっては、根本的な解決にはならない」と、おっしゃっています。

 

 この、じっと耐えている間に、体の中では一斉に状態をよくするための動きが始まっているということです。人体の中には100人の名医がいる。それぞれが、ことあるごとに与えられた役割を果たし、人の体をメンテナンスしている。このとき、人間は自分の体の中から、ある特定の化学物質を出したり、ホルモンバランスをコントロールしている。つまり、自分で、自分用の薬を作っているわけです。

 

 おそらくは、西洋医学が日本に入ってくる前までは、このような治療法が主流だったはずです。薬草を煎じたり、日々の暮らし方を変えたりしながら。こうなってくると、昭和を通り越して、江戸時代まで遡った暮らしこそが、人間にとって大切なことの手本になるとみています。

 

 人は、よく働き、よく食べ、よく笑い、よく眠り、はやり病など何するものぞ!と。ちょっとした病気などは、相手にもならないような強い体を持ってこそ、動物界の中の一員として、認めてもらえるのではないか。自分の食べる分だけのために、沢山の農薬を使い、海の生き物を根こそぎとってしまって、食べのこしを廃棄したり、こんなことをしている場合ではないのですが、ぼくの中では、もう、答えは決まっています。

 

 お医者さんは、職にあぶれるでしょうが。