シニアって、

 

 「不足している保育士確保のために、シニアが活躍」

 

 というニュースがあった。仕事も子育てもひと段落した58歳の女性が、保育所で働きだした。自身、3人の子供を育て、育児経験は申し分なし。共に働く若い保育士にも、子育てを含めた、様々な助言ができる。慢性的に不足している保育士不足に一役買っている。

 

 ん、58歳?

 

 ってことは、ボキは、もう「シニア」?!!!

 

 調べてみると、

 

シニア=・年上の人。

    ・若者でもシニアと呼ばれることもある(中学生の野球:シニアリーグ)。

    ・高齢者。

    ・同名の父、息子、の父(英・米):ドリー・ファンク・シニア。

    ・PGAシニアツアー:参加資格は50歳以上のプロゴルファー

    ・シニアカー=高齢者向けの一人乗り電気車両。

 

 なんだか、ホッとしたような、落ち込んだような…。

 

 街で「明日からはこの冬一番の寒さ」なんて言われると、もう1枚、厚着していこうかな、となってしまう。これが、シニア?

 

 逆に、強引な割り込みをされても「クオリティの低い奴だ」と、さらりと流せる、これも、シニア?

 

 歳はいくつ?あの人は年上?何キロ?給料いくら?今、何時?

 

 あまり、歳や数字にこだわらない生活をすることに努めています。その方が楽だからです。仕事をしている以上は、ある程度気にしなければならない時間というものはありますが、帰宅後や休日にはなるべく時計で行動を決めないようにしています。休日でも早起きするというのが必須条件ですが。

 

 他人の数字に興味はありますが、聞いて、知ったところで、ぼくの暮らしが変わるわけでもありません。ぼくにも人と比べて、自分の数字を気にしていた時期がありますが、あまり、充実した暮らしをしているとはいえませんでした。環境、時、場所、数字、などを、何かを選択するときの第一条件から外すと、より、ことの本質の部分と近いところにいることができるからです。

 

 ぼくは、長野県で30年近く働き、自分でレストランを経営していました。売りは、ブラジル料理。そのため「私も、昔はブラジルにいたんだ」という年配のお客様も多く、それぞれに「この年になると、もうあの距離の移動は厳しいんだよ」と、みなさんおっしゃります。

 

 ブラジルに行くときに飛行機に乗っていると、ぼくは毎回エコノミークラスですが、なんのなんの、かなりのご年配の乗客がたくさんいます。みなさん、タフです。

 

 セアラー州の首都、フォルタレーザといたときのことです。大西洋に面した、素敵な町。国際空港があり、主に、ヨーロッパからのリオ、サンパウロに匹敵するブラジルの玄関口です。もう一歩先のブラジルを体験したい人たちに人気。

 

 その街で、家族と会いました。ぼくに会いに、内陸600㎞離れたところから来て。決してコンディションの良くない一般道を、車で約7時間の旅です。空港で、彼女たちの乗ってくる車を迎えます。ここまで来る途中に、ほとんどの乗客たちはすでに降りていて、ぼくの家族が最後。荷物がたくさんあるので、そのままホテルまで、ぼくも乗せてもらうことにしました。気が付くと、もう一人、まだ乗客が残っています。おばあちゃんが。

 

 聞けば、逮捕された孫に会いに、これから警察署に行くのだそうです。自分用の小さなバッグをひとつと、孫の着替えを入れた大きなバッグ。今日中に身元引受人にならないと、明日、刑務所に移されてしまうというので、とにかく着替えを持って家を出た、と。

 

 もし、今日警察が孫を出してくれなかったら、明日、手続きをしなくてはならない。そうなったら、今夜泊まるところはない。「街には誰も知り合いがおらず、来るのも初めてです」持ち合わせも少なく、旅の疲れよりも、その心労の方が大変そうでした。

 

 しかし、そこは人情の国ブラジル。気のいい運転手が一役買ってくれそうです。このルートの運転手は、600㎞走り、目的地で一泊して、翌日、内陸へと向かう乗客を乗せまた600㎞の繰り返し。一人で、大きなバンを運転し、毎週3000㎞を走っています。彼もまた、ぼくよりだいぶ年上です。

 

 なにせ、毎回600㎞ですから、乗客や途中の街々に知りあいも多く、こういう土地では、何とも頼りになる人間です。街の両替屋、美味しいレストラン、警察官の知りあい、あいつが死んだところ、先週の事故現場、街を出た「あの娘」の居場所…、何でも知っています。なので、基本、無口です。

 

 「到着地まで(なにもなければ)600㎞、宿無し、添乗員、もちろんなし」

もし、日本でこんなツアーがあったら、どんなに有名な旅行社でも、こんなうたい文句では、だれも集まらないでしょう。

 

 

        馬が車をつくったか?

        鳥が飛行機をつくったか?

        人間なら、立って歩け

 

 

 アトランタからリオへ向かう飛行機の中、作家の話で盛り上がっているとなりの先輩、600㎞の道のりを孫に会いに行く「ぶっ飛ばす号」に乗ったセニョーラ、そして、クラクションを鳴らしながらぶっ飛ばす、頼れる運転手。

 

 女性がバッグを選ぶとき、なんといってもデザイン重視、おしゃれさを求める。しかし、何よりも重さが重要、かっこよくても重たいバッグはダメ、という日本の女性。ここに、歴然とした人間力の差を感じます。

 

 見た目はともかく内面の部分で、おとこ、おんな、そして動物。忘れてはいけない。外見を決めるのは他人、自分を決めるのは心。心の老化が進んだならば、ぼくは老人。

 

 立ち上がる時「よっこらせ!」っていうのは、大目に見てね!