芝の上で

 ラグビーを見ています。にわかではありますが「陶酔」しています。

 

 すばらしい。

 

 スポーツ観戦には事欠かない日々が続いていますが、何か消化不良気味です。せっかくのすばらしいプレーが、もちろん選手たちは、真剣にプレーしているのだろうげれど、どこか色落ちしてしまい。

 

 ハーフスウィングには「今、振ったでしょ?」と、かならず1(3)塁審判に聞くキャッチャーの甲子園。もはや、「殴った!クビだ!やだっ!」と芸能ネタのほうが多い相撲。いつも完全ホームでの試合をして「相手のミスを皆で喜ぶ」バレーボール、何点取られていても、相手がミスしたらみんなで笑顔。プロ野球のヒーローインタビューでの「これからも応援よろしくお願いします!」

見ごたえのあるプレーのなかに底知れぬ不快が混ざっている。実況、CM、演出、いろいろな原因はあるのだろうけれど…。

 

 ラグビーは澄んでいて、何の曇りもない。競技はきわめて危険で、だからこそ、肉体だけではなく、精神面も鍛えあげられた者だけが、そのグランドに立ち、代表として選ばれ、真剣勝負をしている。そこに、怒りや復讐はなく、皆で決めたルールに従い

「さあ、どっちが強いのか決めようぜっ!」

これだけだ。

 あれだけのハードなタックルでぶつかり合い、他のスポーツであれば乱闘になってもおかしくないようなプレーでも、倒れた相手に手を差し伸べる。本当に強い男とはこうあるべきだ。一瞬一瞬のプレーにも「正義」があふれている。それは、審判も含め、控え選手、監督、コーチ、グランド中に広がり、ボールボーイ、そしてスダジアムにまでが、とても神聖な空気に包まれている。審判のジャッジに対して、一切の不平不満を言わず、言い訳もせず、そのそぶりも見せず。反面、アンフェアーなプレイには、当事者だけではなく、スタジアム全体、TVを見ているファンも容赦しない。汗だくになって、ただ、ひたすらボールを前に進めていく。倒されたら、また、立ち上がり、そして前に進む。再び倒されたら、また立ち上がる。ある意味、そこに敵・見方、勝ち・負け、はなく、人は「本物」を見に来ている。

 

競技が乱れたら、街が汚れたら、モラルを忘れたら、

言い訳を考える前に、ラグビーを見よう。

 

千代の富士の連勝を止めた、九州場所千秋楽の大乃国

ブルペンでキャッチボール中、右腕のテーピングをはがしだした松坂。

因縁の2本目を飛び終えた原田、そして雪の中に飛び立った船木。

WBCイチローの一打。

 

 人それぞれ、墓場まで持っていく、心に残る一場面、ありますね。人に語るわけでもなく、書き残すことでもなく、心の中に鮮明に残る、あの場面と、一緒に生きていくことの幸福。

 

 まっすぐには転がらない、不安と期待。